2024年10月27日日曜日

RIP Phil Lesh


僕の中でベーシストの概念を変えてくれた人。
対話するような演奏は、本当に飽きが来ないし、素晴らしいものだった。
上記名演、途中でジャムが「Tighten Up」へと変化していくのだが、
フィルさんの対応は実に自然でさりげなく、センス抜群だ。
大胆なプレイもしつつ、全体のバランスも司っているのも彼だった。
前にGrateful Deadのおすすめの聴き方を書いたが(→過去の記事)、
これからしばらく追悼でフィルさんだけに集中して耳を傾けていたい。
フィル・ゾーンに陣取った気分で。今はそんな心境だ。
幸い、音源は沢山残されている。
感謝しつつ、これからもずっと聴いていきたいと思う。

2024年10月26日土曜日

Immanuel Wilkins、ジャズの抽象性と向き合う。


BLUE NOTEの若手サックス奏者イマニュエル・ウィルキンス(米フィラデルフィア出身)の3rdアルバム『Blues Blood』(共同プロデュースにミシェル・ンデデオチェロの名前)より。
僕は好きな女性SSWジューン・マクドゥーム(→こちら)経由で今回知ったわけだが、
現代のブルースとは?というアメリカの黒人ジャズマンとしての思索に、
ワールド・ミュージック的なエッセンスが副次的に広がっていく音楽性は面白かった。
多少頭でっかちで、スムーズ過ぎて行儀良い感じだが、超一流の腕前なので仕方なかろう。
わざと崩してやるよりは全然いい。
僕はこれを聴いてヘンリー・カウの『Concerts』を思い出した。
あっちはもっと粗くてプログレしてるが、思索の精神性に共通点があるのかな。

2024年10月25日金曜日

Prince Daddy & The Hyena、ポップに反りかえって威勢良し。


Spotifyの恒例金曜日のRelease Raderプレイリストからピンと来た曲を。
米ニューヨーク州の結成10年目、コリー・グレゴリー率いる4人組パンク/エモ・バンドの新曲。
エンジニアが一緒ということで、Oso Osoにも通じる音像で意気揚々です。
過去にニュー・ラディカルズのカヴァーをしていることからも分かるように、
根がポップ好きなんでしょうな。端々からキラリとしたメロディーがこぼれ出してます。
全盛期のポウジーズみたいな甘酸っぱい疾走パワー・ポップとして楽しむのが正しい。

2024年10月21日月曜日

Henry Parker & David Ian Roberts、アコギ・デュオ・インスト。


英国のアコギSSW2人による、今月出たアルバム『Chasing Light』収録曲のライブ。
実際のアルバムもスタジオ・ライブ録音ということで、それをアピールしている形。
歌はなく、インストなので、どうしてもB・ヤンシュ&J・レンボーンの『Bert And John』を想起しちゃいますが、あそこまで渋くなく、ごりっと硬質でもなく、柔らかくまったりしたサウンドです。
上記曲は二人ともDADGADで弾いている、ということが下記Bandcampのブックレット写真でわかりますので、変則チューニング好きは是非。

Bandcamp→こちら

2024年10月19日土曜日

Fur Trader、美しきシンフォニック・フォーク。


米シカゴでMinor Charactersというバンドをやっていたアンドリュー・ペルティエがLAに移ってきて始めたソロ・プロジェクト。
3年前から現在まで20〜30分ほどのアルバムをいくつかリリースしていて、
上記は今月出る最新作『Whose Dream Is This』からの先行曲。
ハイプとは無縁の世界で、ひたむきに内に向かって美しい楽曲を作り続けている。
今回、Minor Charactersも初めて知ったので合わせて聴いているが、
才能の迸りを感じます。
気に入ったので、いい曲あったら今後も紹介していこう。

Bandcamp:Fur Trader→こちら
Bandcamp:Minor Characters→こちら

2024年10月18日金曜日

Sharp Class、リッケンバッカーはかきむしるべし。


英ノッティンガムのトリオ・バンドSharp Classの今週リリースになる2ndより。
過去に「Gimme Some Lovin'」のカヴァーをしていることでも明白だが、
現代版モッズ・バンドっぽい音になってます。
本人達はモッズというキーワードを発していないものの(でも、バンドのロゴに矢印入ってます)、この勢いまかせなノリは買いです。
下記Bandcampでは一足早くアルバムが聴けて、
もちろんザ・ジャムみたいな楽曲発見できます。

Bandcamp:Sharp Class→こちら

2024年10月17日木曜日

Spencer Thomas、ほのかに南部を感じて。


米国ジョージア州アセンズのアメリカーナ・バンドFuturebirdsの鍵盤奏者のソロ活動。
名前を検索すると「きかんしゃトーマス」ばっか出てくるので、
あんまり調べられないが、今年出た新作アルバムが2ndのようだ。
この3年のあいだ地元の仲間とちょっとずつ録っていたらしい。
上記曲はアルバム最終曲。ビートルズっぽいんだけど、
南部の香りもうっすら漂っている気がする。
大らかで、実にリラックスした、気持ちいいサウンドだ。

Bandcamp:Spencer Thomas→こちら

2024年10月16日水曜日

Dominic Angelella、こんな風に素朴でいいんだよ。


過去の記事→こちら

元Hop Along、米フィラデルフィアのシンガー・ソングライター。
上の投稿以降はLucy Dacusのバックについていたりしたようだが(→Tiny Desk)、
いつのまにかLame-Oを離れてしまったようで、新作が出ていたことに今週気がついた。
内容はローファイな、ライブ感のあるだらけた生活感が滲み出たインディー・ロック。
BandcampのキャプションにVU、ビッグ・スター、シルヴァー・ジューズを聴いていた、と書いてあったが、なるほど、多少お行儀の良かった前作よりもルーズで僕は好きだった。
メロディー作りのツボは(地味ながら)今回も押さえてます。

Bandcamp:Dominic Angelella→こちら

2024年10月14日月曜日

ブルース傑作をあらためて聴く⑧

おっと。昨日の記事を書いてたら、何年も前の下書きを発見。
戦前ブルースで何か書こうとしておったようだ。
多分もっと濃くしたかった途中段階だと思いますが、蔵出ししておきます。
(動画リンク切れは修正しました)


ダウナーで憂鬱、出口なし。1931年、スキップ・ジェイムス29歳の録音。
ミシシッピ出身であるが、農場で働いたような経歴ではないよう。
しかし、この憂鬱さは何だろう。ずしっと来てヘヴィ。
この後ブルースから足を洗い、聖職に就くが、戦後ブルースの道に帰還した。
過去のブログ記事→こちら


正確にはスライド・ギターを操るゴスペル・シンガー。
この曲も元々は賛美歌。でも、歌詞は消失し、あまりに孤独なブルース・フィーリングだけが屹立している。通常は強烈なダミ声で歌う人だけにその対比がぐっと来る。
ヴォイジャーのゴールデン・レコードにも収録されたらしいが、
これを宇宙に送るという発想は全くもって素晴らしい。
1897年生まれ。1927年(昭和2年)録音なので30歳の時の歌。


戦前ブルースマンで一番好きなのは、今も昔もブラインド・ウィリー・マクテル。
楽曲の幅が広いが唐突な感じは一切なく、いつ何時聴いても味わい深い。
12弦ギターと歌声の甘い響きの中に香るブルース臭もたまらんものがある。
この曲はタジ・マハール経由でオールマン・ブラザーズにカヴァーされ有名になった。
ステーツボロはマクテルさんの出身地だ。1928年録音。

基本的にはえぐいブルースを求めたがる性分であるが、就寝時にまったり楽しんでいるのはビッグ・ビル・ブルーンジーだったりする。声がいいし、一本調子じゃないので安定して聴き心地がいいのだ。体が大きかったからこの芸名なんだろうけど、この歌の包容力も込みなんだと思う。1936年録音。

▪️ブルース傑作をあらためて聴く       
▪️過去のブログ:Son House→こちら
▪️過去のブログ:Sleepy John Estes→こちら

2024年10月13日日曜日

DELMARKのブルース名盤が廉価版に。


これはお得な企画です。来週PーVINEより廉価1,650円にて発売になる5タイトル。

MAGIC SAM『West Side Soul』
MAGIC SAM『Black Magic [Deluxe Edition]』
JUNIOR WELLS『Hoodoo Man Blues [Expanded Edition]』
JUNIOR WELLS『Southside Blues Jam [Deluxe Edition]』
J.B. HUTTO & HIS HAWKS『Hawk Squat [Deluxe Edition]』

上記はジュニア・ウェルズの名セッション。
オーティス・スパンの亡くなる間際の味わい深いピアノ演奏は感涙ものなので、
是非聴いてください。
そこに絡むバディ・ガイのタメまくりのギター・ソロも最高だ。
ピッキングの粒を揃えなきゃ、とか思ってるギタリストはこの名演を聴いて、
本当に大切なものとは何か、考えてみよう。

過去の記事→J.B. ハットー

2024年10月9日水曜日

Mt. Misery、爽やかですが、メンバーは髭面。


英国北部の4人組インディー・バンドの2nd『Love In Mind』が11月にリリース予定。
自分達で湖畔のコテージ録音したもの(上記MV参照)を、
Saint Etienne、Heavenly、The Hit Paradeらの仕事で知られるイアン・キャットにミックスしてもらっている。
人脈的にもネオアコ・ファンは要チェックです。

Bandcamp:Mt. Misery→こちら

2024年10月6日日曜日

Christo Graham、馬に聞かせてください。


4年前の記事(前々作)→こちら

一昨日出た新作『Music For Horses』より。
待ってたけど、どうやら今作からはMVは出さない模様。
馬は動画見ないからかな。
アルバムの内容は、全体的に優しくてパーソナルな温もり感が満載。
ちゃんとしたスタジオで録ってないらしいが、その雰囲気が反映しているのか。
前作ほどルーツ寄りじゃないのも自分的には好み。
後半の弾き語りの連なりが情趣あり、であります。

Bandcamp:Christo Graham→こちら

2024年10月5日土曜日

Billy Tibbals、ごきげんパーティー・ソング。


デビュー時の記事→こちら

今春に出ていた最新EP『Nightlife Stories』収録曲のMVが来ました。
躁状態で「世界は回ってるぜっ!」と、辺り構わずはねくってます。
楽しい仕上がりですな。デビュー・アルバムはいつになるのかな〜。

2024年10月4日金曜日

The Smashing Times、へっぽこを愛す。


Raven Sings The Blues(→こちら)さんが推してる米メリーランド州ボルチモアの、
男女5人組だらけ系ギター・バンドの新曲。5thとなる新作アルバムが11月にリリースとのこと(K Records/Perennial Death Records)。
やる気がなさそうに聴こえるが、The Lemon Twigsの前座とかもやってるちゃんとした人達で、音の方も実はセンス良し。
根っこはK Recordsらしいジャングリーなギター・ポップ。
そこからサイケデリックでおかしな枝葉がにょきにょき伸びてきている感じ。
もっとへっぽこがいいよ、という方は過去作へどうぞ。
そもそもバンド名がテレヴィジョン・パーソナリティーズの曲名から、という人達なので、
申し分ないはず。

Bandcamp:The Smashing Times→こちら

2024年10月1日火曜日

『サイレンサー』来月で20周年。


以前noteに公開していた『サイレンサー』未収録曲を。
危険な曲ですな。メロディーは夕刻の段々畑の如き風格あり。