2010年9月13日月曜日

Cryptic Creeps

人生初のバンドが「爽やかポップ」だったが故に早々に解散したという話は前回書いた。
しかしながら、解散したという意識は他のメンバーには無かったかもしれない。
何故なら次のバンドもエスカレーター式に同じメンバー構成になったからだ。
結局、みんな仲良しだったから、高校生の頃は得てしてそういうことになるのである。
ただし音楽性は思いっきり振り切れて、今度はハードコアなメタルを目指した。
バンド名はCryptic Creeps。
今度はコピーもやった。メタリカの「Damage Inc.」は決めの1曲だった。
僕は歌わず、ギターと曲作りに専念。
ヴォーカルは状況に応じて変わったりしていたな。
そのバンドでは高校の文化祭なんかにも出た。
めちゃくちゃだったけど、今ではいい思い出になっている。
地元のバンド・コンテストなんかにも出て「特別賞」というものをもらったなぁ。
何だか微妙な賞だが、要するに他のバンドと同じ土俵で評価してもらえなかったんだろう。

Cryptic Creepsはしかし、バンドでの活動よりもギターとヴォーカルだけのオリジナル曲をカセットに録音することの方に重点を置いていた。
メイン・ヴォーカルは前回も紹介した、ちょっと変わった人である「よっちゃん」である。
彼はシュールでお下劣なオリジナル・ギャグを幾つか持っていた。
下らない内容なんだけど、勢いと押し出しの強さだけで周囲を笑わせてしまう破壊力があった。
僕はゴリゴリのメタル・リフを作り、そこに彼の人間性を乗せてみたのだ。
基本1曲1分のスタンスで、カセットのAB面に何十曲も収録する、という悪ノリぶり。
当時、人気のあったアンスラックスとかビースティー・ボーイズのノリに影響を受けつつも、
メタルのギターリフと、瞬発的で意味不明なギャグのみで構成する音楽だったから、
これはかなり画期的だった。
未だかつてこういうメタルはなかった(恐らくこれからも出てこないだろう)。
友達に教室で聞かせたら、笑い死にしそうになっていたもんだ。
内輪受けでも、何となく面白そうな空間が出来ていればOK、という風潮が80年代後半にはあって、そんなムードにもマッチしていた。
音はローファイそのもの。同時代のダニエル・ジョンストンやセバドーの初期作に近い音像。
当然ビッグになる、などという観念は毛頭なく、
ただ自分達が笑えるものを作っていただけだった。
普通の高校生がバンド・ブームに浮かれていた時期に、
僕らはかなり独自の道を進んでいたことになる。
しかし、100曲以上量産し、色々とアイディアを練っていたこの頃の経験は、
その後の“まじめな”活動にも絶対に活かされていると思う。
自分で決めたコンセプトを誰の意見にも左右されずまっとうする、
という創作の流れはさほど今と変わらない。

というわけで、今回は聴いてみました。
その時の音源を。

カセットには「Cryptic Creeps 4」と書いてある。
4作目ということか。
しかし、聴きだしたらカセットが途中で空回りして止まってしまった。
テープが経年変化で劣化しているのだろうか。
でも、正直な話…
今はそれ以上聴かなくてもいい気分だ。
「糸こんにゃく~!」などとサビで叫んでいる1曲目のタイトルは「死ね!」。
こ、これは…ひどい。
どうしたもんだろうか。
確かに(あまりにひど過ぎて)くすっと笑ってしまったのは認めよう。
しかし、これは若気の至りと言うしかない代物だ。
前言撤回します。
こりゃダメだ。
この時代の僕は瘧がついていたとしか思えない。
何考えてたんだろうなぁ?
僕も記憶の中で美化し過ぎ。
その後の“まじめな”活動に、これの何が活かされていたんだ?
100曲も作るなよ…。
これはもう門外不出、決定。
Cryptic Creepsよ、永遠に。
以上。


BGM:The Drums / The Drums