JAN/POS:4582217970773
発売日:2020.4.15
価格:¥2,500(税抜き)/¥2,750(税込)
流通:BRIDGE
1.ふがいない夏が始まる
2.夏の小さな虫
3.シ・ン・プ・ル・トゥモロー
4.そして、ねむい
5.ボクシング vs 口内炎
6.ヴェスト
7.これからきっと
8.サンデーで一週間
9.キュレーター
10.休日の終わり
11.ずっと君といたかった
2年半振り、徳永憲の11作目となる新作のテーマはギター・ポップ。
パワーポップやネオアコ好きの徳永の、これがジ・アザーサイド。
青春は一度だけ。でも、蒸し返しちゃっていいじゃない!
作詞/作曲/編曲/歌と演奏
録音とミックス/プロデュース:徳永憲
「数年前のある日、息子の学校行事で小学校に行った。自分が通っていたのと同じ小学校。
そこの体育館で久しぶりに見たのだ。天井に挟まったバレーボールを。
その時、唐突に 「あっ、ギターポップ作らなきゃ」 と思った。
心が沈み、落ち込んでいだ時期だった。
僕は久し振りにギター・ポップを聴いていた。サブスクでたまたま聴いて救われていたのだ。
ギター・ポップへの恩返し。それが今回のザ・コンセプト。
あのバレーボールにも捧げたい。
今でもきっと天井に挟まっているアイツに」
徳永憲
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【本作にまつわる思いつきメモ】
前作発表時のMM誌インタビューの最後に「次はギターポップを作りたい」と言っていたのだが、
本当にその言葉通りつるっと出来てしまったのがこの新作。
もっともその頃の目論見はもっと80'sから90'sへの過渡期的な、例えばジザメリ、ライトニング・シーズのようなバシャーンというドラム・サウンドを狙っていたので(それが青春だった)、
すべてが構想通りに出来たわけではない。
そういう飛び道具的な意匠は、歌詞を書き揃えて整えていくうちに装飾的過ぎると思われたのでボツになった。今回の歌詞は全部実生活との距離が近いものだったので、自然の成り行きだったと思う。無茶なアレンジは似合わないけど、その分まっとうなアルペジオがはまってくれる、そういうギター・ポップになった。
で、なんでギター・ポップなのかというと、ただ単に沢山エレキギターを弾きたかったから。
ここ数年でそういう欲求になっていた。
田舎に住んでいるのでアンプも鳴らせるし、ソロもいっぱい弾きたかった。
「キュレーター」なんてエレキのみ、アコギなしで、これは僕の曲の中では極めて珍しい。
TFCの「スター・サイン」に寄せたオマージュ・イントロをつけたのも、より多くエレキを弾きたかったからだ。ギターソロは右の人がそのまま弾くが、この定位はマシュー・スウィート『ガールフレンド』の音像しか意識してない。
「ふがいない夏が始まる」ではマンチェスターっぽいワウワウ・カッティングを入れたが、こういう懐かしいアレンジも今作以外では絶対にしなかっただろう。
「これからきっと」の後半のハモリではザ・スミス「ショップリフターズ〜」を意識したりもした。まぁ、堅いことを考えず、思いつくことをそのままやった感じだな。
曲作りは(前作同様)過去の若かった自分と現在の自分との共作がほとんど。
40代後半にもなると当然メロディーの閃きは減ってくる。昔はDコードをジャラーンと気持ち良く鳴らしただけで、新しいメロがいくつも湧いたものだが、経験を積むとそういうわけにはいかない。DはDにしか聞こえなくなる。幸い未使用のギター・ポップ的なエレメンツはまだまだあったので、現在の編集感覚でもって共作していった。
作曲は努力で何とかなるもんじゃない。
それを知ってるからこそ、若い自分の残したマテリアルは存分に利用していく。
例えば「ずっと君といたかった」のリフは10代に作ったものだが(大学時代の友人は憶えているかもしれない)、こういうものは今自然には出てこないと思う。
作為的にひねり出すことは可能だろうが、作為的に作っても自分にはバレているので、結局は乗り切れない。
ピュアな閃きが曲の源泉であること。それは昔から自分が拘っているポイントだ。
歌詞はまぁいつもの通り。書きたいと思うように書けるので、何も問題なし。
今回は青春度高め。もう50手前にして青春かよ、と思う人もいるかもしれないが、これにはカラクリがある。
実は息子が現在10代で、自分のすぐそば、身の回りでリアルな青春感を出しているのである。
そこにインスピレーションを得たのは間違いない。
面白がっていたら、ペンがするする運んだというのが真実だ。
ただのノスタルジーだけでは、自分のモチベーションも上がらないだろう。
ただし、ここまで青春ものを纏めることは今後はないかな。
曲単位では発表することはあろだろうが、アルバムとしては今回が「青春総決算」の位置付け。
そういう気分だった。
同時に曲名にオレンジ・ジュースの放題オマージュをねじ込むという小技も忘れちゃいませんよ、と。
意識のはざまのかすかな所でささやかに存在する、そんなギターポップが好きだ。
『牙に見えたよ、君のストロー』もそういうニッチな場所で逞しく育っていってくれたらと思う。
追記:
出稿もしてないのにミュージック・マガジンがレビューを載せてくれている。
ありがたい。
いつも思うことなのだが、少しずつでいいので聴き手の思い出の中に残っていけたら御の字だ。
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