2012年6月27日水曜日

つえ最強説

足腰の弱くなった老人に重宝されている杖。
みんなはあの棒を、上から目線で見ていないだろうか。
僕も以前はそうだった。
しかし、今やその無限の可能性に気づいてしまっている。
ある時、杖に似たつっかえ棒を手にしてブラブラしていた時、
「ハッ」とその素晴らしき機能性に気づいたのだ。
これはただのつっかえ棒だが、これで持ちやすいグリップ柄が備わったとしたら、
もっとスゴイのではないか。
いや、待てよ。
それって杖?
と脳内に電流が走りまくった。
あの弱き人々を助ける杖を、健康な人間が持てば、まさにその力は倍増。
すごい武器になり得るのだ。
そもそも英国紳士のステッキは武器だったという話もある。
そう、そうなのである。

勿論、世間にはもっとすごい武器が山程ある。
しかし、それらの弱点は町中で堂々と携帯できないことだ。
日本刀を帯刀して歩けば、そりゃ怖いものなしだろうが、
間違いなくおまわりさんに囲まれてしまう。
でも、杖では囲まれない。
それなのに、いざという時には、例えば、山でクマにばったり出くわした時とか、
とんでもなく心強い武器になってくれるのだ。
ああ、杖があって良かった、と。
不幸中の幸い、とはこのことだ。
吉本新喜劇の間寛平のギャグを思い出して欲しい。
ヨボヨボのおじいさんが杖を振り回す暴力的なギャグを。
誰もがあの破壊力を手にすることが出来るのだ。
「止まったら死ぬんじゃ。」と決めセリフを言えれば、みんなコケてくれるだろう。

まぁ、武器にするってのは極端な話であるが、
日常生活に於いても杖の便利な使い方は数限りなくある。
杖は思ってる以上に固いし、手頃な長さもあり、重すぎることもない。
応用力に優れている。
僕はデパートで、エレベーターのボタンを杖で押し、一度も立ち止まることなく、
すっとエレベーターに乗ったジジイを見たことがある。
その時は手で押せよ、と後ろから睨んだものだが、
成る程、杖の応用力の高さを見せ付けられた瞬間でもあった。
それから、杖で交差点を指し、道を教えているジジイも見たことがある。
普通、杖で体を支えるだろ、とその時も後ろから睨んだものだが、
成る程、節くれ立ち湾曲したジジイの指より、分かり易いのは杖だな、とも思ったのだ。
何が言いたいのかというと、杖は実は危険レベルが高いので、
老人でも取り扱いに注意してくれ、ということだ。

よくよく考えてみれば、杖を持ったヒーローもいるではないか。
ベムとか。
ベムは強いぞ。
あの杖を持った立ち振る舞いはニヒルでカッコ良かった。
あと、座頭市も杖使いだな。
中に刀を仕込んでいるのは気に入らないけどな。
そう言えば、うちのおじいちゃんも杖を持っていた。
それも自分のお手製の杖だ。
うねりの入った無骨な木の枝を削り、研磨し、ニスを塗り、
丹念に仕上げてあるカッコ良い杖だった。
使ったところは見たことないけど、
もしかしたらあれはいざという時、戦う為のものだったのかもしれない。