「ハックション」の「ハッ」がない「クション」にはびっくりする。
隣にいたオッサンが突然それをやらかしたりした時なんぞ、
心臓が止まったかと思う程だ。
統計的な数には出てないだろうが、マジで年間数人くらいはオッサンの「クション」にビックリして、
死んでしまう人がいるのではないか。
近親者はその突然の不幸に悲しむわけだが、
まさかその死因が「クション」だったとは知るべくもない。
心臓発作だと思っている。
真相を知っているのは死んだ本人のみだ。
「まさかそんなことで死ぬなんて…」と消えゆく意識の中で呟いているに違いない。
隣のオッサンはそんな気配には気付かず、「おお、さぶ」などと言いながら歩き去って行くのだろう。
悲劇だ。
それにしても「クション」の破壊力は凄まじいという話である。
「ハッ」がない分、エネルギーを極限にまで貯めこんだパワーがある。
先日、ビルに囲まれた路地でそれを炸裂させていたオッサンを目撃したが、
その近辺を歩いている通行人全員が振り返っていたもんな。
殆どそれは防衛本能とも言うべき、振り返り方だった。
暴力団の抗争か何かと間違えそうな空気の振動で、
みんな身の危険を感じたのである。
しかし、稀に可愛らしい女子でも「クション」族がいる。
あれはいいのだ。
あの種族はギリギリまで「ハッ」を出すのを堪えていて、
結局堪え切れなくて「クション」が出てしまうお手柔らかなタイプだ。
あれは許せる。
むしろ「可憐」だと言ってもよい。
そう、僕が断じて許すまじと思っているのは、オッサンのそれだ。
良くない。デリカシーに欠ける。配慮に欠ける。
やった方はそれでスッキリするのかもしれないが、
受け手側はただ“驚き損”をするだけ。
その後、じわじわと無性に腹が立ってくる、
世間的に何の役にも立たない、全くの悪の権化なのである。
でも、それ以上に腹が立つのが、時々「ハッ」だけ叫んでおいて、
「クション」を引っ込めてしまうオッサンである。
それはそれで、こっちの足並み乱れるわ。