2006年12月9日土曜日

今さら崖っぷち犬

先月、徳島に崖っぷち犬がいるってんで、
大きな話題になってたよな。
テレビで生中継してたりして。

あれ、助かって本当に良かったよなぁ。
と、今更ふと思うのだ。
あの救出劇の後、「税金の無駄使いだ」なんて言う人も出てきたが、
そういう人達は何にも分かってない。
あのマヌケ犬は、本当に助かって良かったし、
助けて正解だった。
僕は思うのだ。
もし、あいつが崖から転落して死んでいたら、
今この日本はどうなっていただろうと。
間違いなくGNP国民総生産はちと下がっていたであろう。

あの犬があれだけ話題になったのにはそれなりに理由があると思う。
あの犬は今の日本社会の中で、
一番どうでもいい、一番最底辺にいたヤツなのだ。
で、「そのもう一段上にいるのは自分だ」と無意識下で感じている人間が大勢いたのである。
僕も当然その一人。
…見て見ぬフリは出来ん。
あの一匹のみすぼらしいマヌケ犬ですら、
手を差し伸べることが出来ない殺伐とした心を持ちたくない。
大勢の人々がそう思い、あの犬の事を気にかけたのである。
アホでマヌケで孤独、運まで悪いアイツを
そう簡単に「マヌケだから死ね」と言って突き放せなかったのは、
その傷みが伝わったからである。

僕は今想像する。
あの崖っぷち犬がマヌケな顔をして、ちゃんと何処かで生きていることを。
本当に助かって良かったなぁと思う。
あの犬はきっと今、
再チャレンジしている。


BGM:The North Star / Roddy Frame